奥歯の部分入れ歯の種類ごとの費用やメリットとデメリットをわかりやすく解説
【監修:歯科医師 篠﨑章敬】
奥歯の部分入れ歯には様々な種類があり、それぞれ費用やメリット・デメリットは異なります。今回は、奥歯を補うために部分入れ歯が必要となる理由に加え、保険適用のものから自由診療のものまで、それぞれの特徴を詳しく解説します。
1.奥歯に部分入れ歯が必要な理由
2.奥歯の部分入れ歯の種類と特徴
2-1保険適用の部分入れ歯
2-2自由診療の部分入れ歯
3.奥歯1本あたりの部分入れ歯の費用
4.部分入れ歯の費用を抑える方法
5.奥歯に部分入れ歯を入れるメリット・デメリット
6.部分入れ歯以外の失った奥歯の治療法
7.まとめ
奥歯に部分入れ歯が必要な理由
奥歯に部分入れ歯が必要な主な理由としては、以下のとおりです。
1.噛む力のバランスを保つ
奥歯は、食事中に食べ物を噛み砕く重要な役割を担っています。奥歯が欠損すると、噛む力が前歯や他の歯に不均等に分散されるため、他の歯に過剰な負担がかかり、欠けたり破損したりするリスクが高まります。その結果、さらに多くの歯を失う恐れもあります。
2.噛み合わせのバランス
歯が欠損した状態を放置すると、隣接する歯が移動を始め、歯並びや噛み合わせが乱れる原因となります。この状態が続くと、歯に亀裂が生じたり、顎への負担がかかったりするリスクも高まります。
3.発音の明瞭性
歯が失われたままになると、特に「サ行」「タ行」「ラ行」などの発音に支障をきたすことがあります。発音時に必要な口腔内の空間が変化することで、言葉が不明瞭になり、コンプレックスを抱く原因にもなりかねません。
これらの理由から、奥歯に部分入れ歯を装着することは、健康的な口内環境を維持するためには非常に重要です。
奥歯の部分入れ歯の種類と特徴
部分入れ歯には、大きく分けて2種類のものがあります。
・保険が適用されるもの
・自由診療のもの
それぞれの特徴について、詳しくご紹介します。
保険適用の部分入れ歯
保険が適用される部分入れ歯は、主に「プラスチック製」です。そして、金属製のバネ(金具)を用いて隣接する歯に固定し、安定性を確保します。
保険が適用されるため初期費用を抑えられるメリットがある一方、いくつかの欠点も存在します。
たとえば、耐久性を確保するためにプラスチック部分を厚く作る必要があり、その結果、見た目が大きくなったり、装着時の違和感に繋がったりすることがあります。
また、長期間の使用によりプラスチックが劣化しやすい点も課題です。さらに、入れ歯を支える金属のバネが口を開けたときに目立ってしまうことも、見た目上のデメリットとして挙げられます。
これらの点を踏まえ、保険適用の部分入れ歯を選ぶ際には、長期的なメンテナンスや将来的な交換の必要性も考慮することが大切です。
自由診療の部分入れ歯
自由診療で部分入れ歯を製作する場合は、見た目の美しさと機能性を高めるために、金属などの高品質な材料を用いることが可能です。これによりフィット感が向上し、見た目の問題も大きく改善されます。
さらに、個々の口腔の状態に合わせて細かくカスタマイズできるため、装着時の違和感を大幅に軽減できることも大きな特徴です。
<金属床>
保険適用のプラスチック製の入れ歯には一定以上の厚みが必要すが、金属床を使用した入れ歯は薄く作ることができるため、口内での違和感が少なく、自然な使用感が得られます。また、金属は熱伝導に優れているため、食べ物や飲み物の温度を自然に感じることができます。素材には、チタン、コバルトクロム、ゴールドなどが使われ、これらはアレルギーのリスクを低減する効果も期待できます。
<ノンクラスプデンチャー>
金属を使用しない部分入れ歯で、口を開けた際にも金具が見えません。ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリルなどの素材が使用され、軽量で柔軟性が高いのが特徴です。ただし、素材が柔らかいため噛む力が弱くなるほか、たわみが生じやすい点がデメリットです。また、修理や調整が難しい場合もあります。
<マグネットデンチャー>
磁石を利用して固定するタイプの入れ歯です。残っている歯に取り付けた金属に磁石で吸着させて安定させます。固定力が高く、着脱も簡単ですが、金属部分に汚れが溜まりやすいため、定期的な清掃とメンテナンスが欠かせません。
<コーヌスデンチャー>
残っている歯に金属の内冠を装着し、その上から外冠を装着して固定するタイプの入れ歯です。固定用の金属が外から見えないため、見た目が非常に自然で、揺れも少なく、装着時の違和感もほとんどありません。長期間にわたり安定した使用が可能です。
奥歯1本あたりの部分入れ歯の費用
部分入れ歯の製作に伴う費用についてのご案内をします。選択する治療方法によって、費用は大きく異なります。
<保険適用>
保険適用の部分入れ歯の費用は、1本あたり約5,000円〜10,000円程度です。
<自由診療>
自由診療では、使用する素材や個々の口腔の状態に合わせて、より細かく製作することが可能です。審美性や快適性にもこだわり、高品質な材料を使用することで、より自然な見た目と快適な使用感が得られます。
費用は選択する素材によって異なりますが、一般的には約10万円〜30万円程度かかることが多いです。
なお、医院によって費用設定に差があるため、具体的な金額や治療については、事前に歯科医師との相談をおすすめします。
部分入れ歯の費用を抑える方法
○保険適用の入れ歯を選択する
保険適用の入れ歯は、費用を大幅に抑えることが可能です。ただし、使用できる素材に制限があるため、見た目や装着時の違和感については、多少の妥協が必要になる場合があります。
○自由診療の入れ歯で条件を絞る
自由診療では、素材や設計により費用が変動します。そのため、必要最低限の機能に絞ることで、高価な材料や複雑なデザインを避け、費用をある程度抑えることが可能です。
費用を抑えるためには保険適用のものを選択することが最も効果的ですが、見た目や使用感に妥協が生じる可能性があります。どのような入れ歯を選択するかは、治療の目的や優先順位によって異なります。そのため、治療を始める前に、ご自身の希望や生活スタイルを踏まえて歯科医師と十分に相談することが大切です。
奥歯に部分入れ歯を入れるメリット・デメリット
<メリット>
・部分入れ歯以外の選択肢と比べて、費用が抑えることができる
・治療期間が短縮できる
・取り外しができるため、残っている歯の清掃がしやすい
・失った歯を入れ歯で補うことで、噛み合わせや見た目を回復できる
<デメリット>
・自分の歯と比べると噛む力が低下する
・装着時に違和感を覚えることがある
・毎回取り外して清掃する手間がかかる
・金属で固定するため、支えとなる歯に負担がかかる
・金属部分が見えて、審美的に気なることがある
部分入れ歯のメリット・デメリットを踏まえたうえで、ご自身の希望や生活スタイルに合わせ、納得のいく方法を選びましょう。
部分入れ歯以外の失った奥歯の治療法
部分入れ歯以外にも、次の2つの治療方法があります。
<ブリッジ>
ブリッジは、失われた歯の両隣の歯を支えにして、連結した被せ物を装着する治療法です。短期間で治療を行うことができ、歯に直接固定されるため違和感が少ないというメリットがあります。
ただし、隣接する健康な歯を削る必要がある点や、多数の歯が失われている場合には適用できないことがデメリットです。
<インプラント>
インプラントは、顎の骨に人工歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に人工歯を取り付ける治療方法です。隣接する健康な歯を削る必要がなく、顎の骨に固定されるため、安定して噛むことができます。
一方で、外科手術が必要なうえ、インプラント体が骨と結合するまでに数ヶ月を要するなど、治療期間が長くなる点がデメリットです。
まとめ
部分入れ歯にはさまざまな種類があり、治療方法によって使用される材質や費用も異なります。
奥歯を失ったまま放置すると、噛み合わせのバランスが崩れ、他の歯にも悪影響を及ぼす可能性があります。部分入れ歯を使用することで、こうした問題を防ぎ、口腔内のバランスを維持することができます。
最適な治療方法を見つけるためには、歯科医師との相談が重要です。ご自身の状況や希望に合わせて、最適な選択肢を一緒に考えてみませんか。